昭和39年(1964年)ごろのシャープのCS-10A|そろばんの隣に据えられた25kgの計算機と事務室の静けさ
重さ25kg、値段は大衆的な乗用車とだいたい同じ。そんな卓上計算機が会社の机に載り始めたころの話です。昭和39年〜昭和43年(1964〜1968年ごろ)のシャープのCS-10Aの仕様と定価は情報処理学会コンピュータ博物館で、当時の呼び名はシャープの公開ページで、開発の経緯は家電Watchの連載で確かめました。

70代の時間軸
CS-10Aは1964(昭和39)年に製造・発売された、世界初のオールトランジスタ・ダイオードの電子式卓上計算機だと、情報処理学会コンピュータ博物館の頁は説明しています。作ったのは早川電機工業、現在のシャープ。ゲルマニウム・トランジスタ530個とダイオード2,300個を含む約4,000点の部品からなり、大きさは420×440×250mm、重さは25kgでした。定価の53万5千円は、当時の大衆的な乗用車とだいたい同じ値段です。家電Watchの連載は、初任給が19,000円の時代だったと書いています。
シャープの公開ページは、この機種を「コンペット CS-10A」と呼んでいます。開発は1960年に社内へ研究室を置いたところから始まりました。初めの目標は大型コンピュータで、それが途中でソロバンのように「いつでも・どこでも・だれにでも」使える小型の計算機へ変わります。数字はフルキー式で10桁まで入れ、答えはニキシ管の20桁の表示に出ました。演算の速さは毎秒で加算80回、乗算2.5回。
スチールの事務机の上に、小さな旅行かばんほどの箱が据えられている。一度置いたら、まず動かしません。経理の部屋では、それまで機械式の計算機が歯車の音を立てていました。コンピュータ博物館の頁は、この機種が静粛性でも好評を博したと記しています。キーを押しこむと指先に軽い手ごたえがあり、ガラスの管の中で数字が灯る。計算の間に手持ちぶさたになった担当者が、箱の上に手をかざして、ほのかな熱を確かめていました。隣の席からはそろばんの珠を払う音がして、検算の手は当分そのまま残ります。蛍光灯の下で湯のみの緑茶が冷めていき、夕方に見学の人が来ると、課長がわざと長い掛け算を打って見せました。
家電Watchの連載によれば、発売した本人たちの側でも「大きすぎるし、値段も高い」という声があり、1969年には世界初のLSI電卓QT-8Dへ進みます。シャープは50周年を記念してCS-10Aを3Dデジタルアーカイブ化し、ミニチュア制作に使えるデータとして公開しました。25kgの箱は、いま手のひらに載る模型の題材です。
そろばん塾の帰りに父親の会社で見せてもらった子には、箱の大きさのほうが残っているようです。見本市の人だかりの後ろから覗いただけなら、覚えているのは数字の光だけかもしれません。コンペットの光る数字を初めて見たのは、どこの会社の、どの課の机の上でしたか?
シャープのCS-10Aを思い出す三つの手がかり
- シャープのCS-10Aにまつわる場所を一つ思い浮かべます。家、学校、駅前、友だちの家など、名前が出てこなくても構いません。
- そこで一緒にいた人と、音・匂い・手触りのどれかを書き添えます。曖昧なところは「たぶん」「覚えていない」で大丈夫です。
- いまの自分へ一言だけ残します。正解を書く欄はありません。次に誰かとその話をするときの入口になります。
出典と編集方針
このページは、公開資料で時代背景を確認しつつ、特定の世代の体験を一つに決めつけない読みものとして編集しています。地域や家庭による違いがあります。あなたの記憶と違う箇所は、間違い探しではなく会話のきっかけとして扱ってください。
- 情報処理学会 コンピュータ博物館 情報処理技術遺産「CS-10A」
- シャープ「ミニチュア制作に活用できるCS-10Aの3Dデータを公開!!」
- 家電Watch「シャープ、「誠意と創意」の歴史を辿る 第4回」
- 編集確認日:2026-11-02。出来事の事実確認と、個人の記憶・感想は分けて記載しています。