昭和53年(1978年)ごろのコルグのMS-20|パッチケーブルを一本差しかえるたびに鳴り方が変わった机の上
「机上に壁を」。昭和53年〜昭和57年(1978〜1982年ごろ)のコルグのMS-20は、この言葉をコンセプトに出てきました。コルグが公開しているMS-20の歴史のページと開発者インタビューで、板金の寸法にまで及んだコスト管理の話を確かめ、机の上で鳴らした時間を思い返します。

60代の時間軸
コルグの歴史のページによれば、MS-20は1978年に「机上に壁を」のコンセプトで世に出ました。前の年のPS-3100の回路をモノフォニックに落としこんだもので、VCO、VCF、VCA、EGを2系統積み、パッチ・パネルと外部音声入力まで内蔵しています。「できるだけ多くの人々にシンセを」というテーマから、ボディの板金寸法まで経済寸法をもとに決めたと書かれています。鍵盤は37鍵。下位のMS-10は32鍵で、発売当時の価格は¥53,500でした。
パッチをしなくても、つまみだけで内部の結線のまま音は出ます。そこから一本差すと話が変わる。コルグの製品ページが「太く粘りのあるサウンド、強烈なアナログ・フィルター」と書くその音は、レゾナンスのつまみを少し上げただけで、机の上の小さなスピーカーから部屋の壁へ噛みついてきました。
学校から帰ると、まずランプをつける。低い机の上で黒い機械の電源を入れると、つまみの列に光が丸く並びます。ケーブルの先の細い金属を穴へ押しこむと、指に小さな手ごたえが返り、同時にスピーカーがぶつっと鳴る。その音で隣の部屋の親が咳をするので、音量のつまみを絞ってからつなぎ直すようになりました。短い鍵盤を一つ押さえたまま、つまみを少しずつ回していくと、低いうなりが高い悲鳴に変わっていく。長く電源を入れておくと天板がわずかにあたたかくなり、チューニングがじりじり動きました。ノートにつまみの位置を時計の針で書き写し、次の日に同じように回しても、同じ音はなかなか戻ってきません。雑誌のパッチ図を机の端に貼り、色の違うケーブルで同じ形を作ってみる。二本のケーブルが垂れて手の甲にふれ、弾くたびに揺れていました。
2013年のMS-20 miniは86%の大きさになり、開発者の三枝文夫と西島裕昭はインタビューでMIDI IN端子やUSB端子を足した点を語っています。35年前の開発を振り返って、トランジスタの選別に悩んだこと、黒板サイズの超大型MS-20を作ったことも出てきます。ケーブルを抜き差しする手つきは、復刻でも同じです。
自分の小遣いで買ったのがMS-10だった人、楽器店の試奏コーナーでだけ触れた人、貸しスタジオの隅に置かれた一台を覚えている人。コルグが関連製品まで合わせて延べ30万人と数える持ち主の外にも、この音の記憶はあります。MS-20のパッチ・パネルで、あなたが最初にケーブルをつないだのは、どの音を変えたかったからですか?
コルグのMS-20を思い出す三つの手がかり
- コルグのMS-20にまつわる場所を一つ思い浮かべます。家、学校、駅前、友だちの家など、名前が出てこなくても構いません。
- そこで一緒にいた人と、音・匂い・手触りのどれかを書き添えます。曖昧なところは「たぶん」「覚えていない」で大丈夫です。
- いまの自分へ一言だけ残します。正解を書く欄はありません。次に誰かとその話をするときの入口になります。
出典と編集方針
このページは、公開資料で時代背景を確認しつつ、特定の世代の体験を一つに決めつけない読みものとして編集しています。地域や家庭による違いがあります。あなたの記憶と違う箇所は、間違い探しではなく会話のきっかけとして扱ってください。
- コルグ「MS-20 mini」History(Road to MS-20 mini)
- コルグ「MS-20 mini」製品ページ
- コルグ「MS-20 mini」Interview(開発者インタビュー)
- 編集確認日:2026-11-02。出来事の事実確認と、個人の記憶・感想は分けて記載しています。